ローン・クレジット事業撤退に伴う戦略説明会を開催しました

GMOインターネットグループは、グループの継続的な発展を目指し、「ネットインフラ事業」・「ネットメディア事業」に続く第3の事業領域として、2005年夏より金融事業に参入して2年が経過しました。しかしながら、誠に遺憾ですが、本日をもって、「ローン・クレジット事業」からの撤退を決定いたしました。

この背景には、テレビや新聞などで報道されているように、クレジット・消費者金融業界を取巻く環境が、貸金業法の改正、過払い利息返還の動向、そして、昨年10月13日に発表された公認会計士協会の会計指針の変更など、激しい外部環境の変化があります。 私たちのローン・クレジット事業についても、こうした激変に直面し、これまで資本金の強化や資本業務提携など、考えられる対策を全て講じてきました。 しかしながら、今後も、まだまだ外部環境の不透明が拭えない状況を考えると、一時的な損失を出したとしても、この事業から撤退することが最善であると決断しました。

本日、19時より渋谷本社大会議室でアナリスト・機関投資家様向けの戦略説明会を開催いたしました。個人投資家の皆様にもその内容をご説明させていただきたく、ブログにアップを致します。

以下、私が先ほどご説明した内容をほぼ忠実に記述してあります。是非、ご一読下さいませ。(各資料は、クリックしていただくと拡大します。)

さて、今回の一連の開示についての結論と要約です。結論から申しますと、事業環境の不透明性からローン・クレジット事業から完全撤退をいたします。手法としてはMBO形式で行いまして、これにより撤退損失が64億円計上されます。保有株式数はゼロとなり当下期より非連結となります。

しかしながら今回は新株予約権のみを保有しまして、ダウンサイドリスクを排除しつつ投下資本回収の途を残します。

さて、今回の撤退によりローン・クレジット事業のトータルの損失が185億円となりまして、中間決算時におきます連結自己資本の金額は一時的に6億円となりますが、すでに本日現在で連結自己資本が30億円まで回復することが確定しております。この内容についてご説明いたします。

まず、財務バランスを鑑み連結子会社であるGMOインターネット証券の全株式を私が引き受けさせていただいております。この取引によりGMOは連結上の売却益を28億円計上しております。

結果として金融事業セグメントから撤退という結果となっております。

またGMOホスティングセキュリティの株式を連結子会社を維持する範囲で一部売却を行い、自己資本が30億円となります。現段階で、金融事業のBSは当社のBSから切り離され、大幅なスリム化が実現されます。

今回の意思決定により、ネットインフラ事業、ネットメディア事業に経営資源を集中し、ゆるぎない強みを最大限に活用していきたいと考えております

では、まずローン・クレジット事業撤退の背景として参入から現在までの状況を簡単にご説明いたします。

2005年8月に旧オリエント信販を買収しローン・クレジット事業に参入を果たしました。その後IT化を順調に進め、私どものネット事業とのシナジーは着実に出ておりました。

しかしながら、過払い金の返還請求を認める最高裁の判決に端を発し、公認会計士協会の利息返還引当金に関する実務指針の変更により複数年分の引当を計上するというルールができ、当社も昨年度の決算におきまして多額の引当金を計上いたしました。

その環境変化の中で、今年に入りましてもローンポートフォリオの見直し、リーマンブラザーズ証券様と提携などの戦略を進めてまいりましたが、大手各社のさらなる利息返還金の積み増し、5%の金利を認める最高裁の判例など、事業環境の回復の兆しはみられず、ダウンサイドリスクが読みきれない状況が続いております。

さて、ローン・クレジット事業の撤退の背景ですが、大きく3点の理由があります。

1点目は、事業環境の不透明性です。その不透明性はさらに3つにまとめられます。

A)まずは、底の見えない利息返還リスク
B)次に今回の最高裁の判決にありますように、今後も新たな司法判断、法規制、法解釈が発現することによるみえざるリスク
C)また今回の利息返還損失引当金に象徴される業界動向に依存する流動的な会計処理がもたらす損益計算の不安定性

となります。

そして、2点目の理由としてこれら不透明性により私どもの成長事業であるインフラ・メディア事業の事業価値が埋没してしまっている点です。いいかえますと巨大なかつ不透明なバランスシートのリスクにPERや成長期待で評価されるべき本来の事業価値がみえにくくなっているといえます。

3点目の理由ですがこれらの底の見えないダウンサイドリスクを模索する経営から脱却し、限りないアップサイドを追及する攻めの経営への転換をはかり、インフラ・メディア事業への経営資源の集中を図って生きたいと考えております。

以上がローン・クレジット事業の撤退の背景となります。

では次に今回の撤退のスキームについてご説明いたします。

ご覧いただいている表の右側は今回の撤退による損失、左側は自己資本増強のための利益を確保する取引となっております。

まず、表の右側、ローン・クレジット事業の撤退スキームですが、今回は、現経営陣に対するMBOという形式で保有株式91.1%の全株式を528万円で譲渡いたします。この取引により連結上64億円の減損損失が中間決算にて計上されております。また、この取引を含め、この中間期でローン・クレジット事業の損失額の影響は約186億円となります。

一方、現物株は保有ゼロになりますが、今後の外部環境次第で当該事業が好転するような場合にはアップサイドの投資利益のみとれるようワラントを取得予定であります。

さて、このローン・クレジット事業の撤退で自己資本を毀損しますので、急速な自己資本の回復を図ります。それが左側の取引です。

GMOインターネット証券を48億円で私が引き受けましてGMOは28億円の連結上の売却益を計上します。また子会社GMOホスティングセキュリティの一部売却によりまして連結上の売却益を7億円見込んでおります。これは株価への影響を最低限にする為に「市場外取引」で行います。

今後は連結子会社の株式の売却は一切予定しておりません。

この撤退スキームにより、結果としてGMOインターネットグループは金融事業から撤退し、インフラ・メディア事業に経営資源を集中してまいります。

続いてバランスシートの現状と今後の見通しについてご説明いたします。

まず、今年の3月時点での連結BSですが総資産1395億円、連結自己資本116億円であり、自己資本比率は8%でありました。

今回の中間決算でローン・クレジット事業の撤退に伴う損失を計上することにより、一時的ではありますが、連結自己資本の金額が6億円となりました。

しかしながら、現時点でのBSは金融事業撤退により総資産が770億円減少し、また株式の売却により24億円の自己資本の強化が図れますから総資産570億円、自己資本30億円と自己資本比率は5.3%となります。

さらに今年の12月末までの見込みとなりますと、連結自己資本についてはイーバンク株式の売却で60億円まで、さらにはCBの転換が進みましたら110億円まで改善が進むと考えております。

さらに投資キャッシュで有利子負債の削減を進め、総資産300億~400億円まで圧縮を考えております。このアクションにより自己資本比率が最大37%まで改善することになります。

ただいま申し上げましたバランスシートの変化について自己資本の側面からご説明申し上げます。

中間決算まえの自己資本は166億円ございました。今回のローン・クレジット事業の損失と撤退損失の合計は186億円となっております。税金資産の計上などの利益の増加が26億円ありますので、先ほど申し上げましたように中間決算時の自己資本は6億円となりました。

現時点では今回速やかに行った株式の売却により税引後で24億円の利益の増加をもたらしております。

そして今後イーバンク株式の売却やCBの転換で自己資本をさらに改善していく方向です。

また、GMOインターネット本体の有利子負債の削減シナリオですが、現在の有利子負債が303億円ございます。一方手元の資金が162億円あります。今回8月の株式の売却により約60億円の投資キャッシュフローがあります。

さらに年内にイーバンク株式の売却により72億円の投資キャッシュフローを積みまして有利子負債の大幅な削減を図りたいと考えております。

さて、今回の業績予想の修正についてですが、今回の中間決算におけるローン・クレジット事業の利息返還金関連のコストの追加計上が140億円ほどございます。また、ローン・クレジット事業、証券が連結から除外される影響が売上が145億円減少します。一方利益で20億円の減少となりますが、こちらは当初計画で見込んでいた利益であります。

さて、今後の当社の成長の柱となるインフラ・メディア事業については売上で28億円、利益で2億円の上方修正をさせていただいております。

さて、今後のローン・クレジット事業撤退後のPLの改善・利益成長のポイントを3点ご説明申し上げます。

1点目ですが、金利費用が来期以降大幅に軽減するということです。

2007年に計上されている金利費用は7億円ありますが、今期中の有利子負債の削減により来期はほぼゼロになるだろうと見込んでおります。

2点目ですが、今回の事業撤退により320億円ほどの税務上の繰越欠損金がでますので、この7年間で多額の節税効果が期待できます。

3点目ですが、来期以降はインフラ・メディア事業に集中することにより成長基調を更に加速させていきたいと考えております。

ローン・クレジット事業撤退後のPLのイメージですが、こちらはインフラ・メディア事業のみのPLの年度推移です。過去の実績、当期の見通しともに着実に成長していることがお分かりになると思います。2008年のグラフは成長イメージになります。

このように金融セグメントからは撤退する形になりますが、インフラ・メディアの両セグメントには大きな影響はありません。

私どもの強みは、

・ほぼ全てのサービスをゼロから作り上げる技術力と商品開発力。
・それを自前のWebサイト、コールセンター、営業マンに加え、多くのセールスパートナーを通じて販売する力。
・これらを支える強靭な組織力。
・そして、なによりも私どものサービスを日々ご利用いただいているお客様に支えられています。

これからは、原点に返って、この強みを最大限に活かし、「ニッポンのインターネット部」として圧倒的に優れたサービスを提供し、お客様の笑顔を広めていくつもりです。

強いGMOをお見せしますのでご期待ください。

(8月16日に予定している「アナリスト・機関投資家様向け決算説明会」の資料は、通常通りIRサイトに当日アップさせていただく予定です。説明会のビデオ映像とプレゼン資料を予定しております。 http://ir.gmo.jp/ )

この発表に伴い、「グループ事業戦略」2007を更新しました。私達グループにご興味のある投資家の皆様は是非ご一読ください。こちらからどうぞ。

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